個人が所有する不動産(土地、借地権、建物)を売却して利益が出た場合には、売却した年の翌年の3月15日までに譲渡所得税の申告(所得税の確定申告)が必要となります。
また、居住用不動産を売却して損失が出た場合など一定の場合には、損失の場合でも申告をした方が納税額が減額されるため有利となるケースもあります。
譲渡所得はどの様に計算するのか?
では、申告が必要かどうかの譲渡所得はどのように計算するのか。
譲渡所得税のご相談で一番多くご質問頂くのは、「売却価額(譲渡価額)に税率をかけるのですか?」というものです。
売却で得た金額(収入額)=利益と考える方が多くいらっしゃいます。
しかし、所得税の譲渡所得の計算は、下記の算式で行います。
売却価額(譲渡価額)-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得
※特例等で一定の控除額を控除する場合を除きます。
★税率については、売却した不動産を取得したときから売却した年の1月1日までの所有期間に応じて税率が適用されます。
- 所有期間が5年以下の場合 39.63%(所得税、復興特別所得税、住民税)
- 所有期間が5年を超える場合 20.315%(所得税、復興特別所得税、住民税)
マイホームを売却した場合などの特例は?
譲渡所得は、上記で記載した方法で計算しますが、一定の場合には、上記の算式で計算した譲渡所得額から一定の控除額を控除したり、軽減税率を適用することができます。
では、どの様な場合に特例でどのくらい控除できるのでしょうか。
マイホームを売却した場合の長期譲渡所得の課税の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合で一定の場合には、軽減税率の適用があります。
マイホームを売却した場合の特別控除
一定のマイホームを売却した場合には、譲渡所得から3,000万円の控除ができます。
特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
特定の居住用不動産を売却して損失が出た場合には、一定の損失金額について、給与所得などとの損益通算や譲渡損失の翌年以降に繰越すことができあmす。
マイホームの買換え特例
一定のマイホームの買替えを行った場合に、マイホームの売却で利益がでたときは、譲渡所得金額のうち一定の金額の課税を繰り延べることができます。
※この特例を利用した場合には、買替え不動産を売却するときに繰り延べた譲渡所得金額が課税されることになります。
マイホームの買換えの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームの買換え等を行った場合に、マイホームの売却で損失がでたときは、一定の損失金額について、給与所得などとの損益通算や譲渡損失を翌年以降に繰り越すことができます。
収用交換等による譲渡をした場合の特別控除
国等に対する売却や収用交換などによる売却の場合には、譲渡所得から5,000万円の控除ができます。
特定の事業用資産の買換え特例
特定の事業用資産の買換えを行った場合には、譲渡所得金額のうち一定の金額の課税を繰り延べることができます。
(特別控除などと異なり、課税を先に繰り延べる特例のため、買換資産の売却時には課税されます。)
相続した空き家を売却した場合の特別控除
被相続人が居住していた一定の不動産を相続で取得し空き家のまま売却した場合で、一定の要件に該当するときは、譲渡所得から3,000万円の控除ができます。
これらの説明で、「一定の」という言葉が頻繁に出ております。
これは、特例の適用については、細かい要件が設定されているためです。
特例適用の要件に該当するのかなどをご確認されたいときは、ご相談ください。
相続で取得した不動産を売却した場合の計算は?
相続で取得した不動産を売却した場合には、譲渡所得や税率適用の判定を行うための取得の時期や取得費の計算に利用する購入価額等については、「被相続人が取得した日」や「被相続人が取得した価額」を利用します。
なお、相続人が支払った相続登記費用や不動産取得税も取得費に含めることが出来ます。
また、相続から一定の期間(相続の開始の日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの期間)に土地等を売却した場合には、一定の算式により計算した相続税額を取得費に加算することができます。(ただし、相続税額を加算した取得費により譲渡所得が発生しない場合でも、確定申告書の提出が必要です。)
被相続人が取得した際の契約書等がなく取得費がわからない場合やどの費用を取得費とすることができるのかがわからない場合には、当事務所へご相談ください。
取得価額がわからない場合は?
不動産を売却した場合で、その売却した不動産の購入時の契約書等の書類がないため取得価額がわからないケースがあります。
取得価額が不明な場合には、概算取得費の特例として売却価額の5%を取得費として譲渡所得を計算することが出来ます。しかし、この方法では、売却価額の95%から譲渡費用を控除した金額が譲渡所得となるため、譲渡所得が大きくなるすなわち納税額が大きくなることがあります。
このように取得価額がわからない場合についても、「市街地価格指数」や「建物の標準的な建築価額表の建築価額」などを利用して合理的に取得費を計算することもできます。
取得費がわからない場合で、納税負担を軽くしたいときは、是非一度ご相談ください。
※取得時期等によっては、概算取得費を利用する方が有利な場合もあります。
上記で説明を行ってきたように、不動産を売却した場合でも、様々な悩みがあります。
どのような特例の適用ができるのか?
取得費がわからないけど、納税負担を軽くしたい!
などのご相談がありましたら、是非一度、当事務所へお問い合わせください。